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神戸地方裁判所 昭和56年(ワ)1384号 判決 1985年4月25日

原告

林洙漢

被告

吉行春武

ほか一名

主文

一  被告吉行福光は原告に対し、金四五二八万八一一八円及び内金四三一八万八一一八円については昭和五二年四月一一日から、内金二一〇万円については昭和六〇年四月二六日から各完済まで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告吉行福光に対するその余の請求および被告吉行春武に対する請求はこれを棄却する。

三  訴訟費用中、原告と被告吉行福光との間に生じたものは同被告の負担とし、原告と被告吉行春武との間に生じたものは原告の負担とする。

四  この判決の第一項は仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求める裁判

一  原告

1  被告らは各自原告に対し、金四八二七万〇九二九円および内金四三四二万八一一八円については昭和五二年四月一一日から、内金四八四万二八一一円については同六〇年四月二六日から各完済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  被告ら

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求の原因

1  事故の発生

原告は次の交通事故によつて傷害を受けた。

(1) 日時 昭和五二年四月一〇日午後三時三八分ごろ

場所 滋賀県大津市今堅田町九三一番地の一

国道一六号線交差点

被告車 自家用普通乗用車

名古屋五八チ四七―四五

運転者 被告吉行福光

原告車 自動二輪車

神戸さ九三―六九

運転者 原告

(2) 事故の状況

原告が、前記日時場所にて、原告車を運転して同交差点を直進中、対向車線を右折しようと発進してきた被告車が衝突した。

(3) 傷害の内容

傷病名

右骨盤骨折、右下腿開放性脱臼、右股関節脱臼、右変形性股関節症

治療期間

自昭和五二年四月一〇日至同年同月一一日(入院二日 堅田病院)

自昭和五二年四月一一日至同五三年四月三日(入院三五八日 荻原整形外科病院)

自昭和五三年四月四日至同五六年一〇月現在通院中(通院三年六か月以上 荻原整形外科病院)

後遺症

右変形性股関節症(無腐性壊死)により人工骨頭の必要性がある。

2  責任原因

(1) 被告吉行福光は、被告車を保有し自己のために運行の用に供していたものであるから、自賠法三条による責任および、前方注視義務を怠つた過失によつて事故をおこしたものであるから、民法七〇九条による責任がある。

(2) 被告吉行春武は、原告との間にて、昭和五二年六月初めころ、被告福光の原告に対する本件事故による損害賠償債務に関し、次のとおり合意した。

(一) 被告春武は、被告福光の原告に対する損害賠償債務を引受け、被告福光と共に、原告に対し昭和五二年七月から、本件損害金が算定できる時期まで毎月末日限り、毎月五〇、〇〇〇円宛を、原告の普通預金座(神戸市長田区腕塚町二丁目株式会社太陽神戸銀行駒ケ林支店)に振込み送金して支払う。

(二) 本件事故による損害賠償債務は、原告の傷害が治癒し、又は後遺症が確定した際に算定し、前項による支払ずみの金員は右損害金に充当し残余を支払う。

3  損害

原告は現在も通院継続中であるが、本件事故による後遺症もほぼ固定した状況になつたため、本件事故による損害金を算定すれば次のとおりとなる。

(1) 療養費 金五、八八五、一一〇円

(一) 治療費 四、一三九、六一〇円

堅田病院 五六、〇七〇円

荻原整形外科病院

本人負担分 一、二三六、一〇〇円

保険給付分 二、八四七、四四〇円

(二) 付添看護費 四四五、九〇〇円

自昭和五二年四月一二日至同年六月二〇日

自昭和五二年一〇月一九日至同年同月二六日

(三) 入院雑費(室料・寝具代等) 一、二二六、一〇〇円

自昭和五二年四月一一日至同五三年四月三日

(四) 交通費 七三、五〇〇円

昭和五二年四月一一日寝台車代 二四、〇〇〇円

通院費一日五〇〇円実日数九九日 四九、五〇〇円

(2) 逸失利益 金三五、〇三六、四四八円

(一) 休養による損害 八、一六七、五三〇円

休業期間

自昭和五二年四月一一日至同五六年九月一〇日(四年五ケ月)

事故時の職業

鉄工所勤務・機械工

収入 平均賃金(給付基礎日額) 五、〇七三円

(月収 一五二、一九〇円 年収 一、八五一、六四五円)

(二) 後遺症による逸失利益 二六、八六八、九一八円

原告は、本件事故により、右股関節に、無腐性壊死が認められ、人工関節術により人工骨頭にすることを余儀なくされることが明らかとなつた。

従つて前記後遺症により、次のとおり将来得べかりし利益を失つた。

原告の生年月日 昭和二九年四月二四日(事故時二三歳)

稼働可能年数 症状固定日を昭和五六年九月として向う四〇年間

労働能力喪失率 四五パーセント

その存すべき期間 四〇年

事故前の年収

症状固定日を昭和五六年九月とした時の男子の年齢別平均給与月額は、二二九、九〇〇円であるから、年収は二、七五八、八〇〇円

年五分の中間利息を控除して、昭和五六年九月における現在値(新ホフマン係数 二一・六四三) 二六、八六八、九一八円

(3) 慰藉料 金八、四八〇、〇〇〇円

(一) 入・通院に対する慰藉料 三、四八〇、〇〇〇円

(入院約一年 通院三年五か月以上)

(二) 後遺障害に対する慰藉料 五、〇〇〇、〇〇〇円

(4) 損害の填補 金五、七三三、四四〇円

(一) 自賠責保険から 一、〇〇〇、〇〇〇円

(二) 健保による保険給付 三、二一三、四四〇円

療養給付 二、八四七、四四〇円

傷病手当金 三六六、〇〇〇円

(三) 被告らから受領 一、五二〇、〇〇〇円

被告春武の支払分 合計 四五〇、〇〇〇円

昭和五二年七月三〇日 五〇、〇〇〇円

昭和五二年八月三一日 五〇、〇〇〇円

昭和五二年九月三〇日 五〇、〇〇〇円

昭和五二年一〇月三一日 五〇、〇〇〇円

昭和五二年一一月三〇日 五〇、〇〇〇円

昭和五三年一月一八日 五〇、〇〇〇円

昭和五三年二月八日 五〇、〇〇〇円

昭和五三年三月九日 五〇、〇〇〇円

昭和五三年一一月六日 五〇、〇〇〇円

被告福光の支払分 合計 一、〇七〇、〇〇〇円

昭和五二年四月一四日 一〇〇、〇〇〇円

昭和五二年六月一三日 一〇〇、〇〇〇円

昭和五二年六月以降昭和五五年八月まで 八七〇、〇〇〇円

(5) 弁護士費用 金四、八四二、八一一円

着手金 五〇〇、〇〇〇円

成功報酬(請求金額の一〇パーセント) 四、三四二、八一一円

(6) 請求額

以上、(1)から(3)までの合計金四九、四〇一、五五八円から、(4)の金五、七三三、四四〇円を差しひいた金四三、六六八、一一八円に(5)の費用を加算した内金四八、二七〇、九二九円と民法所定の遅延損害金を次のとおり請求する。

(一) 金四三、四二八、一一八円については、昭和五二年四月一一日から年五分の割合。

(二) 金四、八四二、八一一円(弁護士費用)については、第一審判決言渡の日の翌日から年五分の割合。

二  請求の原因に対する認否

1  請求の原因1について

(1)は認め、(2)は否認し、(3)は不可。

2  同2について

(一) (1)のうち、被告吉行福光が被告車を保有し自己のために運行の用に供していたことは認め、その余は争う。

(二) (2)はすべて否認する。

(三) (3)はすべて否認する。

3  同3について

(一) (1)ないし(3)は争う。

(二) (4)はすべて認める。

(三) (5)は争う。

(四) (6)は争う。

三  被告らの主張

1  本件事故は次に述べるとおり、原告の一方的過失により発生したものであつて、被告吉行福光には何らの過失もない。

すなわち、

(一) 被告福光運転の車両は友人の運転する車両二台とともに進行していたところ、本件事故発生地点の信号機のある交差点には青色表示に従い、右折の合図をしながら進入して中心付近まで進行し、対向車線を直進してくる車両の通過を待ちながら停止していた。

(二) しばらくして、対向車線を直進してくる車両はなくなり、対向車線を左折の合図をしながらバスが左折したため、被告福光は右折を開始するにあたり、信号を確認したところ赤色を表示しており、本件交差点付近対向車線上の停止線直前には車両が停止していたため右折を開始した。

(三) 他方、原告運転の車両は、本件交差点の信号機が赤色を表示していたにも拘らず、これを無視してかなりの高速度で交差点内に進入してきたため、すでに右折が半ば近くに達していた被告福光運転の車両を認めるや、原告はこれとの衝突を回避すべく左にハンドルを切り進行したが、前方の歩道入口には鉄棚があり、これとの衝突を回避すべく、さらに右に急ハンドルを切つたため、被告福光運転の車両の右前部に衝突した。

(四) 交差点にいる車両は信号の表示が赤色に変化した場合は、交差道路を進行する車両の進行を妨害しないため、すみやかに交差点の外に出なければならず、赤色の信号を無視して進入してくる車両の存在を予測することは信頼の原則から不可能なことであり、被告福光の運転態度には何らの過失も存しないのである。他方、原告運転の車両は、同一方向を進行していた車両が赤色表示の信号に従い、停止線直前に停止していたにも拘らず、本件交差点内に進入したもので、余りにも無謀な運転態度である。

2  仮に被告福光に過失が認められるとしても、前記1の事情のもとで発生した本件事故であるから、原告にも大きな過失があり、総損害額の五割は過失相殺がされるべきである。

3  被告春武は昭和五二年七月から一一月まで毎月五〇、〇〇〇円、昭和五三年一月から三月まで毎月五〇、〇〇〇円、昭和五三年一一月に五〇、〇〇〇円、合計四五〇、〇〇〇円を原告の預金口座に送金しているが、これは、被告福光の収入が少ないため、立替払いしたにすぎないものであつて、被告福光の原告に対する損害賠償債務を引受けたものではない。

被告春武は、被告福光の親としての立場から見舞金とし、本件直後の昭和五二年四月一三日ころ、一〇〇、〇〇〇円、同年六月一三日ころ、一〇〇、〇〇〇円をそれぞれ原告に支払つており、原告の傷害の治療が長期化すると思われたため、被告福光の負担を少しでも減少させるため、更に五〇〇、〇〇〇円程度の立替払いをしようと考え、分割して原告の銀行口座に送金したものである。

もし、原告主張内容のとおり被告春武が被告福光の原告に対する損害賠償債務を引受けたのであれば、その旨の契約書等書面が作成されるはずであり、また、被告春武が原告への送金を中止した時点で、内容証明郵便等で支払いの督促があるべきところ、原告が被告春武に対し、内容証明郵便で請求したのは被告春武が送金を中止してから二年七か月も経過した昭和五六年六月のことであつて、きわめて不自然である。

四  被告らの主張に対する認否

すべて争う。

第三証拠

本件記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  本件事故の発生

請求原因1の(1)の事実は当事者間に争いがなく、右事実に、成立に争いのない甲第四号証と弁論の全趣旨によれば、原告は、その主張日時、場所で被告吉行福光(以下被告福光という)運転の被告車に衝突されて、右骨盤骨折、右下腿開放性脱臼、右股関節脱臼、右変形性股関節症の傷害を負つたことが認められる(以下本件事故という)。

二  被告福光の責任原因

1  被告福光が被告車を保有し、自己のために運行の用に供していたことは当事者間に争いがない。

2  同被告は、本件事故は、原告において赤信号を無視して、原告車を運転し、本件現場交差点に進入したことにより発生し、原告の一方的過失によるものであると主張し、証人鍋倉誠、被告吉行福光本人の各供述には、右主張に沿う部分があるが、右各供述部分は、たやすく措信できない。かえつて、成立に争いのない甲第二号証、現場検証の結果、原告本人尋問の結果に弁論の全趣旨を総合すれば、(一) 本件事故現場である琵琶湖大橋交差点(以下本件交差点という)は、東西に走る国鉄一六一号線と南北に走る県道とが交差し、その四方に信号機が設置されて、交通整理が行われている、アスフアルト舗装の交差点である、(二) 原告は右国道一六一号線を東から西に直進すべく、原告車(単車)を運転して、その対面の青色信号に従つて、時速約二〇キロメートルで本件交差点に進入した、(三) 原告は、右進入の際、反対車線からきた被告福光運転の被告車が本件交差点の中心付近で右折のため停車しているのを確認し、同車がよもや自車の進路を妨害することがあるまいと信じ、センターライン寄りに直進した、(四) そして原告は、本件交差点に入つて再び被告車を見たところ、その運転席にいる同被告が助手席の若い女性、森園繁子の方を向いていたので、万一の場合に備えて、センターラインから左寄り少し進路を変えて前進した、(四)しかるに同被告は、原告車の進行に全く注意を払わないで、突然被告車を発車させ、本件交差点の中央より少し南の地点で、被告車の右前部を原告車の右側面の後輪及びエンジン部分に衝突させた、(五) 原告は、その際の衝撃により路面に転倒し、前記傷害を負つた、以上の各事実が認められ、それによれば、本件事故につき被告福光の前方不注視の過失があつたことが明らかである。

3  そうすると、被告福光は、自賠責法三条により、原告に対し、損害賠償責任があるものといわなければならない。

三  被告吉行春武(以下被告春武という)の債務引受けの有無

原告は、被告春武が昭和五二年六月ごろ被告福光の原告に対する損害賠償債務を引受けたと主張し、証人林明漢、同木村吉雄の各証言中には、原告の右主張に沿う部分があるが、右各証言部分は、被告吉行春武、同吉行福光各本人尋問の結果と対比してたやすく措信できない。

次に、成立に争いのない甲第八、九号証によれば、被告春武は原告に対し、昭和五二年七月三〇日から同年一一月三〇日までの五か月間毎月五万円づつ、同五三年一月一八日から同年三月九日までの三か月間毎月五万円づつ、同年一一月六日五万円合計四五万円を銀行送金していることが認められるけれども、成立に争いのない乙第一号証の一、二、第二号証、被告吉行春武、同吉行福光各本人尋問の結果を総合すれば、(1) 被告福光(昭和三二年一二月七日生)は本件事故当時一九歳四か月の未成年者であつて、父被告春武の親権に服していたが、本件事故前から被告春武の許を離れて名古屋市内所在の会社に勤務し、自己の費用で被告車を購入して、友人らと共に親光旅行のため被告車を運転して同市内から琵琶湖大橋方面に向う途中、本件事故を惹起したものであり、したがつて、被告春武には、同福光の惹起した本件事故について法的な責任がなく、その債務を引受けるべき事情も存在しないこと、(2) 被告春武は、本件事故後同福光の連絡を受けて、昭和五二年四月一三日及び同年六月一三日の二回にわたり被告福光と同伴して、入院中の原告を見舞い、その都度原告に対し各一〇万円の見舞金を渡しているが、右見舞金は、その当時被告福光が薄給で右見舞金を捻出できなかつたので同被告に代わり、右見舞金を提供したものであり、そして、被告春武は、被告福光がその給料では受傷で苦しんでいる原告に対し、毎月三万円づつしか損害金を支払えず、肩身の狭い思いをしているので、わが子ふびんさに側面からその支払額に上回る金額の経済的援助をするため、昭和五二年七月三〇日から同五三年一一月六日までの期間原告に対し、直接前記四五万円の銀行送金をしたものであつて、かつその送金は、本件事故の態様や損害の程度について未だ十分明らかになつていない段階でなされたものであることが認められ、右(1)(2)の認定事実によれば、被告春武のなした前記銀行送金の事実をもつて、同被告が被告福光の原告に対する本件損害賠償債務を引受けたものとすることができず、ほかに原告の前記主張事実を確認するにたる証拠はない。よつて原告の前記主張は理由がない。

四  損害

1  治療費 四一三万九六一〇円

成立に争いのない甲第三ないし第六号証によれば、原告は前記受傷の治療のため、その主張の日時期間、堅田病院、荻原整形外科病院に入通院し(入院三六〇日、通院三年六か月以上)、その治療費として、頭書金員を要したことが認められる。

2  付添看護費 四四万五九〇〇円

成立に争いのない甲第一六号証の一ないし一七によれば、原告主張の期間、家政看護婦浜田ナカらが付添い、頭書の金員を要したことが認められる。

3  入院雑費 一二二万六一〇〇円

成立に争いのない甲第一五号証の一ないし三七によれば、原告主張の期間、入院雑費として頭書金員を要したことが認められる。

4  交通費 七万三五〇〇円

証人島照子の証言及び弁論の全趣旨を総合すれば、原告は、前記通院中の交通費として頭書金員を要したことが認められる。

5  休業による逸失利益 八一六万七五三〇円

証人木村吉雄の証言、同証言により真正に成立したものと認められる甲第七号証によれば、原告は、本件事故当時有限会社三重鉄工所に機械工として勤務し、本件事故前三か月平均日給五〇七三円を得ていたが、本件事故後昭和五六年九月一〇日までの四年五か月間、前記受傷により休業を余儀なくされ、頭書金員の損害を被つたことが認められる。

6  後遺症による逸失利益 二六八六万八九一八円

前記甲第三号証、成立に争いのない甲第一七号証の一、二によれば、原告は、前記受傷により右股関節痛、右ひざ関節痛及び右ひざ不安定性の主訴があり、レントゲン所見では、右大腿骨頭巨大化に伴う変形、右股関節裂隙狭小化、骨棘形成、右ひざにおける脛骨の後方上りが認められること、下肢の運動機能障害としては、股関節可動区域において、屈曲左右各一四〇度、伸展左右各一〇度、外転右二〇度、左四〇度、内転右二〇度、左三〇度、外施右二〇度、左四〇度、内施右〇度、左三〇度の異常性があり、股関節については、大腿骨頭置換術、人工関節換術、筋解術等が一応考慮されるが、原告本人において年齢的条件によりなかなか踏み切れないでいることが認められ、以上の認定事実に前記甲第三号証、証人島照子の証言、弁論の全趣旨を総合すれば原告には前記受傷により実質上股関節の用を廃したものに等しい後遺障害があり、それにより四五パーセントの労働能力を喪失し、右後遺障害の症状固定日は昭和五六年四月ころであつたと認められる。

原告本人尋問の結果によれば、原告の生年月日は昭和二九年四月二九日であることが認められ、したがつて、原告は、右症状固定した当時二七歳であつて、その就労可能年数は四〇年間(これに対応するホフマン係数は二一・六四三)、男子の年齢別平均給与月額二二万九九〇〇円(年収二七五万八八〇〇円)を収入とし、中間利息を控除して逸失利益を計算すると、原告主張のとおり二六八六万八九一八円となる。

7  入、通院慰藉料 三〇〇万円

8  後遺障害慰藉料 五〇〇万円

9  以上1ないし8の合計四八九二万一五五八円。

五  過失相殺の成否

被告福光は、本件事故につき原告にも過失があつたから過失相殺さるべきであると主張するが、前記二の1認定のとおり、原告は、青信号に従つて本件交差点に進入し、前方及び左右を確認しながら直進していたのに、交差点中央付近で突然発車してきた被告福光運転の被告車に側面衝突させられたものであるから、原告に過失があつたとはいえず、同被告の過失主張は理由がない。

六  損益相殺

原告が自賠責保険、健康保険、被告福光側の弁償等により合計五七三万三四四〇円のてん補を受けたことは当事者間に争いがなく、前記四の9損害額から右損害てん補金を控除すれば、残損害額は四三一八万八一一八円となる。

七  弁護士費用 二一〇万円(六との合計四五二八万八一一八円)。

八  結び

以上の次第で、被告福光は原告に対し、損害賠償金四五二八万八八一八円及び内金四三一八万八一一八円については昭和五二年四月一一日から、内金二一〇万円については本判決言渡の翌日である昭和六〇年四月二六日から各完済まで、民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払義務があるものというべきである。

そうすると、原告の本訴請求中、被告福光に対する関係では、右認定の限度において正当として認容し、その余の部分は理由がないから棄却し、被告春武に対する請求は、理由がないからこれを棄却することとする。

よつて、訴訟費用の負担について民訴法八九条、九二条但書、仮執行の宣言について同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 広岡保)

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